開発スタッフインタビュー
田中 達大 / 尾田 委久 / ゆーすけ
Profile
田中 達大 / R&D シニアエンジニア
兵庫県神戸出身。ゲーム業界歴32年。
パソコン誌のライターから現場に入り、エンジニアとして様々なプラットフォームで開発に携わる。業界の酸いも甘いも体験し、現在も現場の最前線で活躍するソレイユの生き字引的な存在。ソレイユ入社は8年前、当時開発チームのメンバーの紹介にて。
尾田 委久 / テクニカルアーティスト
奈良県奈良市出身。ゲーム業界歴23年。
京都の美術大学を卒業後、某ゲーム会社に入社、その後映像系の会社を経て、大手メーカーでいくつかのAAAタイトルにテクニカルアーティストとして従事。ソレイユには2年前、エージェント経由でオファーがあり入社。家から近かったのと、汎用ゲームエンジン(UE4)を用いた開発にモチベーションが刺激されたことが当時の理由とのこと。
ゆーすけ / プログラマーリード
三重県伊勢出身。ゲーム業界歴8年。
大学卒業後に車両関係のSEからスマートフォンのアプリ開発、遊技機、VRなどを経験し、エンジニアとしては15年目に突入。コンソールゲーム開発は未経験ながらも業務委託として3年間ソレイユの現場で揉まれ、その後入社。入社と同時にリードの大役を任される。
ゆーすけ: おつかれさまです。本当に、お二人ともプロジェクトが佳境の真っ只中にお集まり頂いてありがとうございます。
今日は私、ゆーすけがインタビュアーとして、ベテランのお二人にゲーム開発者向けのお話を伺っていきたいと思います。
尾田: よろしくお願いします。
田中: 本当は今日休みたかったんだけどね。
ゆーすけ: すみません(汗)。それではさっそくですが、皆さんのゲーム開発に参入したきっかけなどをお聞かせ願えますか?
田中: 僕は40年前以上ですが、子供の頃にパソコンに触れたことがきっかけで、将来はゲームプログラマーになると決めていました。
尾田: 美大の頃にCGの個人製作をしていたことがきっかけですが、その頃は就職先が乏しく、フリーターをやりながら絵を描き続けるかゲーム会社に入るか考えた上で、楽しそうで待遇のよいゲーム会社を選びました。
ゆーすけ: なるほど、私もゲームは生まれた頃から触っていたので、田中さんと同じ動機です。やっぱり小さい頃とかに夢中になっていたゲームの開発に関われるのは嬉しいですよね。
田中: 楽しいことばかりではないけど、やりたかった仕事だからね。ただそれに没頭しすぎて、もうちょっと仕事以外であちこち旅行したり遊んだりすれば良かったと思います。
ゆーすけ: お二人とも重要なポジションにいるおかげで、常に仕事が溢れていて、なかなか時間が取れないですからね。昔からゲーム開発はブラックな業界と言われていますが、実際どうでしょうか。
尾田: 一昔前は、どこのゲーム会社も深夜や休日まで働くことが常態化してしまっていて完全にブラックな業界でした。ここ5~6年でかなり改善しましたが。ただ、容易にブラックになり得ます。ゲーム開発は「新しくて面白いものを作る」という前提があるので、明確に作り方が定まっているというよりは常に模索がある。その中でも常にワークフローを考えていないと、すぐにデスマーチになってしまう。
田中: 若い頃のゲーム業界は徹夜泊まり込みが当たり前、スーパーブラックが普通だった。今のようにインターネットも無いので躓くとどう解決してよいか全くわからないことも多かったから。昔は確実にブラック。最近はかなりホワイトになってきてる。今でもブラックな会社には近寄らない方が良いね。
ゆーすけ: 大変な時代だったんですね・・。その感じからすると、今は驚くほどホワイトですよね。私のプロジェクトでも夜中に残っている人はそんなにいないです。
尾田: インターネットの普及もありますが、UnityやUnreal Engine(以下UE)など汎用ゲームエンジンでの開発が浸透して効率化が進んでいることも理由の1つかと。ちなみにソレイユではかなり前からUE4を導入していますよね。
田中: ソレイユではUE3の頃からUEを使っているね。 今のゲームは規模が莫大で、自社エンジンを開発するにはコストがかかりすぎるし、中核部分は作れても豊富な機能やエディタ環境まで用意するのは難しい。限られたリソースでゲームを作成するにはゲームエンジンを使うという選択肢を選ばざるを得ない。UEを選択したのは全ソースコードが公開されているので必要に応じてカスタマイズできるし、不具合の調査がしやすい点。コミュニティや公式から豊富な情報を得られる。
ゆーすけ: 確かに何かあってもエンジンの中身まで追っていけるのが良いですよね。 (尾田さんに)アーティストとしてUE4の良い所はどんなところでしょう?
尾田: 私の過去の職場では自社でゲームエンジンを開発していました。エンジンを自社開発する事は最適化/カスタマイズ性などの点では良かったのですが、最初に絵が出せるまでは非常に時間がかかるので、ゲームの開発中期まではアーティストには想像でアセットを作ってもらうしかありませんでした。
しかしUEは基本的に初日からPBR(Physically-based rendering:物理ベースレンダリング)の絵作りができるので、スタートが早いメリットが。しかも、使いきれないほどの機能が最初から用意されている。さらに複数タイトルで使い続けることでカスタマイズに関しても知見が積まれていく。
ゆーすけ: 開発のスタートアップが早くなりますし、ノウハウを蓄積してクオリティアップや効率化を図れることになりますね。
田中: 言ったようにUEの技術自体はオープンなので、技術者同士の交流の場で知見が共有できる点も大きい。Epic Gamesはライセンシー向けに勉強会を開いていて技術者間の交流も活発だし、他社でやっていることを自社で試してみることもできるし。
ゆーすけ: はい。私も他社様のメンバーとUEの勉強会でメモリ管理やGC周りの相談をして、すごく助けられたことがあります。ソレイユのプログラマー、はるか・ふう(*) の二人はローカライズの勉強会で登壇(**) していましたが、「参考になった」という声を頂くこともあり、良い副次効果が生まれている気がします。
* ソレイユの若手女子プログラマー。 開発スタッフインタビューは こちら 。
** UE4のローカリゼーションに関する勉強会 『Localization Deep Dive』 にて登壇。
田中: もっとオープンに情報を発信して行きたいよね。
ゆーすけ: そういう田中さんは過去に2回、UNREAL FESTで登壇(***) されていますよね。これって実際凄いことだと思うのですが。
*** Epic Games Japan が主催する Unreal Engineの公式大型勉強会。
↑田中が登壇したときのアーカイブ。
田中: Epic Games Japanにはお世話になっているし、ちょうど話すネタがあったから。こういうことには若い人にも挑戦して貰いたいですね。
ゆーすけ: 今のプロジェクトで何か話すネタを考えておきます。
田中: ゆーすけくんは言うほど若くないから。
一同: (笑)
尾田: そういえば、ゆーすけさんはソレイユに入る前はコンソールの経験が無くて、今はリードを任されていますね。どういう経緯があったんでしょう?
ゆーすけ: 前職は車両関係のSEだったんですが、設計や実装の基本的な部分は似通っている点があって、割と頑張ってみたら上手くはまったというか。
田中: ゲームもソフトウェアの開発の一環だからね。基本が出来ていれば通用する部分は多い。
ゆーすけ: 自分がゲーム開発に携わることが出来たのは「タイミングが良かった」と言う他ありません。ちょうど開発後期に差し掛かるころ、UIの追加人員としてアサインされたのですが、バグが起きやすい実装とか、問題の原因をデバッガーとして探ったりするのが得意だったので。そうしたら次第に任される仕事が増えていきました。
尾田: なるほど、適材適所だったと。
ゆーすけ: 最終的には「クラッシュしたら取り敢えずゆーすけへ」みたいな感じになっていました。ただ、バグを修正するより他のセクションへ報告や連絡を取り次いで、自分以外の作業も含めて取り纏めて解決することが何より大事だったと思います。
尾田: そこからコミュニケーション能力も身に着けていった訳ですね。つまり現場で鍛えられて今に至っているということでしょうか。
ゆーすけ: はい、それとソレイユの大ベテランの方々と一緒に仕事をさせて頂く中で、多くの事を学ばせてもらいました。TeamNinja の方と同じ職場に居られるというだけで、正直震えます。その緊張感もあって何倍も成長できたというか。あとは、がむしゃらに日々を頑張ってきたというところです。
尾田: 割と精神論ですね(笑)。でも、何となく分かりました。
ゆーすけ: ベテランのお二人から見て、ソレイユのいいところってどんなところでしょう?
田中: 大きな会社では無いしそれほどメジャーでも無いが、その分活躍できる場面は多いね。
良いところは規模が小さいので小回りが効くところ。若手でも意見が通りやすい。外国人が多いし、女性も活躍している。海外向けのゲーム開発に強い。
尾田: 例えばツールや新技術の導入に関して。以前いた職場は大手だったのでとにかく実用までの手続きが長かった。上司へのプレゼンとか稟議とかで。非常にストレス。ソレイユでは大体のことにおいて判断が早い。
ゆーすけ: なるほど、今って大きすぎず小さすぎず、丁度いい感じの開発規模ですよね。逆に悪いところというと?
田中: 規模が小さいので社内設備や共有機材では大手に勝てない。
ゆーすけ: (汗)
尾田: ぶっちゃけ悪いところもいっぱいある。ただし、前述のように比較的上部の判断は早いので、改善のアイデアが多くある人には向いた職場だと思います。
ゆーすけ: ありがとうございます。一応リクルート向けの内容でもありますので、学生さんやこれからゲーム開発を目指す方へのアドバイスなどを頂けますか。
田中: 今はUE4やUnityなどのゲームエンジンが自由に使えるので、とにかく自分でゲームを作ってみること。ショボくてもタイトルからゲームオーバーまでひととおり完成しているゲームを作る経験をする。人に見せられる作品ができればゲーム開発会社への就職チャンスは大きく広がる。
尾田: 私は描画関連のTAなので、その範囲でいうと昔に比べて独学の敷居は低くなっています。UEもHoudiniも無料で学ぶことができる。しかしだからこそ、競争相手も多いので、もし学生の立場であるなら、デッサンなどの基礎的な絵作りに関する能力を高めておくべき。そうすると採用側の目にとまりやすいかも。
ゆーすけ: ありがとうございます!非常に参考になると思います。他業種からの中途採用であっても、未経験でも、自分のようなケースもあるので、是非ゲームへの熱意のある方に来て貰いたいですね。
尾田: 中途採用だと熱意だけじゃ厳しいかも……。ゆーすけさんよく受かりましたね。
ゆーすけ: (汗)やっぱり険しい道のりだったんですね。
田中: (中途であれ未経験であれ)目指したいもの目指せば良い。ただし、目指すなら本気で。ゲームに対する情熱は必要。それが無いと続かない。常に自分をアップグレードする意欲が無いと続けられない。
ゆーすけ: 身に染みるお言葉です。今はあまり有名ではないですが、知るほどとても魅力的な環境だと思います。できればベテランが存命のうちに、この火を継いでいきたいというのが自分の展望です。
田中: ゆーすけくんはまだまだ若いからね。
ゆーすけ: どっちなんですか!?(笑)今日はありがとうございました。
尾田: お疲れ様でした。